市川美余さんとカーリングを体験

平昌五輪で女子日本代表が銅メダルを獲得したカーリング。その競技を親子で体験できるイベントが、埼玉県上尾市の埼玉アイスアリーナで12月2日に開かれました。講師を務めたのは、元女子日本代表で、平昌五輪のテレビ解説や読売新聞紙上での解説でもおなじみの市川美余さん。埼玉県内の小中学生や保護者ら約40人が参加し、約2時間、初めてのカーリングを楽しみました。

模範の試技を見せる市川さん

「カーリングを見たことがある人は?」。開会式で市川さんが問いかけると、一斉に手が挙がりました。続く質問は「やったことがある人は?」。挙手はゼロでした。それもそのはず、カーリングは北海道や長野県などの一部地域では盛んでも、首都圏では会場が限られているため、体験する機会が少ないからです。「私も小学2年の頃、初めて親に連れられて行き、わけもわからないままやっていました」と話す長野県出身の市川さん。「この中から、日本を代表する選手が生まれるかもしれないと期待しています」と参加者を盛り上げました。

参加者は3グループに分かれ、各グループに東京都カーリング協会のメンバーが2人ついて、指導にあたりました。通常、カーリングは約40メートルの距離で競技しますが、この日は初心者向けの体験会のため、半分の約20メートルで行いました。レッスンでは、専用の靴を使用し、最初はストーンを使わず、両手で前方にブラシを持ち、バランスを取りながら、ストーンを投げるような姿勢で前に滑る練習をしました。最初はなかなかうまくいきませんでしたが、次第に慣れてくると、市川さんや同協会のメンバーが「ナイス、いい感じ!」「初めてには見えないですよ」と声をかけ、参加者の緊張も徐々に解けていきました。

続いて、ストーンを投げる練習に移ると、市川さんが各グループを回り、見本を見せました。「どうしても、恐怖心から腰が高くなったり、つま先立ちになったりしてしまうので、しっかり腰を落として、(後ろの足の)つま先を伸ばしてください」。市川さんは、そうアドバイスすると、遠くの目標を見据え、ピンと伸びた背筋で、氷上をスーッと滑りながら、ストーンを離していきます。その試技の美しさに、多くの参加者が見とれていました。

ストーンは、離すときに軽くひねることで回転させます。そうすることで、コントロールするそうです。参加者は、親子で向かい合って、ストーンを投げるだけの練習もしました。「10時の角度で持ち、時計回りに回して、12時のタイミングで手を離してください」。同協会メンバーのアドバイスを実践しようにも、子どもたちにとっては、重さ約20キロのストーンを扱うのは簡単ではなかったようで、お父さんと参加した上尾市の小学5年の越路弾君(11歳)は、「指導はとてもわかりやすかったけど、ストーンに回転をかけるのは難しかった」と話していました。

レッスンが1時間たったところで、後半はいよいよミニゲームです。各グループ内を二つに分け、ストーンの色に合わせて「赤チーム」と「黄チーム」が対戦。参加者は、対戦前に握手を交わし、ショットが相手チームのストーンをはじき出すと、拍手やハイタッチで喜びを分かち合いました。さいたま市の河井典子さん(62歳)は、一緒にプレーする予定だった中学生のお孫さんが来られなくなったものの、一人で参加。仲間に盛んに声援を送り、「やったことがないことを経験できるのは、いくつになっても楽しい。いい運動になりました」と笑顔を見せていました。

小学生の男の子も見事なフォームを披露
ミニゲームで対戦する前に握手する参加者

全員が投げ終わると、得点の確認です。参加者は、赤と青で描かれた「ハウス」と呼ばれる円に集まり、どのストーンが円の中心に近いのか、判定していきます。最も近いストーンを「ナンバーワン」、次に近いストーンを「ナンバーツー」と呼び、判定していきます。市川さんも、得点確認の輪に入って、子どもたちに「どっちが近いかな?」「何点入るのかな?」と聞いていきながら、ルールを丁寧に教えました。

数回に及ぶミニゲームの終了後、参加者は最後に、ブラシでリンクをこする練習をしました。カーリングのリンクは、あらかじめ散水され、リンクの表面に「ぺブル」と呼ばれる氷の粒が作られています。その粒をブラシでこすって削ると、リンクの表面が溶けて、ストーンが滑ります。競技では、「イエス」「ハリー」といった掛け声の違いで、リンクをこするスピードも変えているそうです。上尾市の小学5年の布山怜さん(11歳)は、平昌五輪でカーリングをずっとテレビ観戦していたそうで、「簡単にできるのかと思っていたら、ストーンが意外に重くて、ミニゲームでも緊張して、うまく投げられなかった。でも、簡単にいかないところがおもしろいので、続けてやってみたい」と話していました。お父さんの布山和将さん(48歳)も「やってみて、オリンピックのすごさがわかりました」と苦笑いしていました。

ハウスの周りに集まり、ミニゲームの得点を確認
ブラシでこする「スイープ」の練習をする娘をお父さんが温かく見守る

埼玉アイスアリーナは、首都圏では珍しく、リンクにカーリングのハウスが描かれていて、カーリングのレンタル用品も充実している貴重な施設です。地元には愛好者もいます。この日、イベントの司会を務めた東京都カーリング協会の橋本祥太朗さんは、2016年の日本選手権の準優勝メンバー。「本場のカナダでは、カーリング場がたくさんあって、日本のボウリングのような感覚で日常的に楽しまれている。日本でもカーリングが気軽にできるスポーツになるといいですね」と、カーリングの輪が広がることを期待していました。

最後は、読売新聞日曜版のキャラクター「猫ピッチャー」を囲んで集合写真