2024年11月29日
主催: MS&ADインシュアランスグループ
共催: 読売新聞社
後援: 公益財団法人日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会、 一般社団法人大学スポーツ協会、磐田市、磐田市教育委員会
協力: 静岡ボッチャ協会、NPO法人 幼児教育従事者研究開発機構、静岡産業大学、公益財団法人鉄道弘済会
MS&ADインシュアランスグループの主催する体験型スポーツイベント「MS&AD Well-being Sports Project 晴れスポ」が11月9日、静岡産業大学(静岡県磐田市)の磐田キャンパス第2スポーツセンターで行われた。このイベントは、日本各地でランニング教室やパラスポーツのアスリートらとの交流を通した「共生社会の実現」を目指し、2022年秋にスタート。各都市を巡り、今回で8回目の開催となる。静岡県では初となるイベントに、近隣の住民を中心に親子ら計約90人が詰めかけ、運動に最適な環境で心地よい汗を流した。
MS&ADインシュアランスグループは、「活力のある社会の発展と地球の健やかな未来を支えること」を企業理念に掲げている。実際、新たなチャレンジに踏み出す人々を支えていきたいという強い思いを抱え、その一環でスポーツ支援にも積極的に取り組んできた。「晴れスポ」も、スポーツを通じた「共生社会の実現」を目指して企画。「スポーツを体験して、心も身体も晴れ晴れしよう」をテーマに、アスリートらの指導によるランニング教室やパラスポーツ体験を通して、参加者に体を動かすことの喜びを伝える。体験会に加え、講師役のアスリートが競技体験などについてユーモアを交えて披露するトークショーも、スポーツの魅力を身近に感じられるイベントの目玉となっている。
今回は、2004年のアテネ五輪以来、北京、ロンドンと3大会連続で五輪出場を果たし、北京五輪では400メートルリレーで第3走者として銀メダルを獲得した元陸上選手の高平慎士さん。
2012年のロンドン五輪の100メートル背泳ぎで銀メダル、400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得した元水泳選手の寺川綾さんがゲストとして参加。
さらにMS&ADインシュアランスグループ所属のアスリートから、中学3年生の時に視力低下や視野の欠損を起こすレーベル症を発症しながら、陸上や相撲など様々なスポーツに挑戦し、現在は視覚障害者柔道の選手として2028年の米・ロサンゼルスでのパラリンピック出場を目指す田中司選手(三井住友海上)。
そして、生まれた時から視覚障害があり、中学から陸上を始めてパリ2024パラリンピックではブラインドマラソンで10位に入り、さらに10月の東京レガシーハーフマラソン男子視覚障害の部で、世界記録で優勝した熊谷豊選手(三井ダイレクト損保)がイベントに加わった。
体験会に先立って、主催者を代表してMS&ADホールディングスの本島なおみ常務執行役員/グループCSuO(サスティナビリティ)が「保険を通じてみなさまの安心安全、そしてウェルビーイングをお支えする立場として「晴れスポ」を企画し、これまで約900人に参加していただきました。イベントを通して体を動かすことを思いっきり楽しんでほしい」と参加者たちに呼びかけた。また、会場を提供した静岡産業大学の堀川知廣学長が「磐田はスポーツの盛んな街で、我が校でも地元の子どもたちに運動施設を開放し、総合スポーツクラブを運営している。本物のアスリートに身近に触れて、スポーツの魅力を体感できる場を提供することを光栄に思っています」とあいさつ。
続いて、静岡を拠点にテレビ番組などで活躍するフリーアナウンサーの荒木麻里子さんによる進行で、参加アスリートによるトークショーが行われた。「アスリート人生の中で記憶に残っているエピソードを教えてほしい」という問いかけに応えたのが高平さん。小学6年生の時の運動会でリレー競技があり、教師たちが勝敗に差が出ないように子どもの走力に合わせた均一なチーム編成にしようとしたのに対し、「そんなのおかしい」と猛然と抗議した思い出を披露した。「その後、北京五輪のリレーでメダルを取ることができたことも、その時の経験が影響していたのかも」と話すと、会場がドッと沸いた。
寺川さんは「小学2年生の時にテレビで五輪の競泳を見ていて、メダルを取った選手を見ていて、自分でもメダルを取ってみたいと思うようになりました」と競技を始めるきっかけについて話した。さらに「今回のイベントのように実際に参加して、本物のスポーツ選手に触れることでしか得られない経験があるはず。身体を動かす中で、そのことを実感してほしい」とイベントの意義について話してくれた。
田中選手は子どもの時に野球に夢中になり、その後、相撲部屋に入門して序二段まで昇段した思い出を話してくれた。それから、陸上でやり投げや円盤投げに打ち込んだことや、視覚障害害者柔道に転向した経歴について紹介。「壁にぶち当たっても気持ちを切らさず、スポーツを続けていきたいという思いだけは変わりませんでした。いろんなスポーツを体験できたことを糧に、柔道ではロスのパラリンピックを目指します」と力強く話した。
熊谷選手は「子供の時は運動よりも部屋にこもってゲームをしているのが好きでした」と意外な告白。それでも自宅から通っていた学校まで片道3キロあったため、ほぼ毎日往復6キロを走っているうちに自然に体力がついて陸上の世界に入っていったという。「楽しみながら練習をすることが、競技を長く続けるコツ」と話し、スポーツという枠を超えた物事への取り組みの姿勢が参加者の共感を得ていた。
トークショーに続いて、ランニング教室とパラスポーツ競技のボッチャ、義足の体験会が行われた。高平さんと熊谷さんはランニング教室を担当。入念な準備体操を行った後、高平さんが、「前を見て走る」「まっすぐな姿勢を維持する」「大きく速く腕を振る」「脚をストンと降ろすイメージで走る」という速く走るための四つのコツを伝授。
実際に高平さんや熊谷さんが走ってみせると、子供たちの目は輝き、二人のアドバイスを確認するようにダッシュを繰り返した。もっとも、子どもたちが歓声を上げながらメニューをクリアしていくのに対し、久しぶりに身体を動かした大人の中には途中で息が上がり、子どもに支えられる場面も。
寺川さんと田中選手はボッチャと義足体験に交互に参加。ボッチャは2チームに分かれ、目標となる白い球に自分の球を投げたり転がしたりして、いかに近づけるかを競う。
静岡ボッチャ協会のスタッフからルールの簡単な説明を受け、参加者がチームに分かれて試合形式で体験。年齢や体力差などに関係なく誰でも参加でき、微妙な駆け引きもあり、球を投げるごとに歓声とため息の交じった声が会場に響いた。
義足体験は、一般の人向けに義肢装具の製作から歩行訓練までを手がける鉄道弘済会がサポート。様々な種類の義足を参加者が実際につけて会場を歩いた。
最初はバランスをとるのが難しく、スタッフに両脇を抱えられながらの歩行だったが、慣れてくると、その場で軽く跳ねたりして義足の感触を確認していた。会場にはスポーツや日常生活など様々な用途に使われる義足も展示され、スタッフにその用途や義肢製作の難しさなどを尋ねる参加者もいた。
参加者は4班に分かれて、これらを順番に体験していった。イベントを安全かつ円滑に楽しめるよう、静岡産業大学の学生たちが全体の運営をサポートしてくれた。磐田市内から参加した山本有紀さん(39)は次女(6)とめい(10)、それに父親(77)の3代でイベントを体験した。「家族そろって体を動かす機会は少ないので、貴重な機会でした。テレビで見ていたアスリートにも身近に接することができ、子どもたちといっしょにイベントを楽しむことができました」と話していた。義足体験を含めてすべての競技を体験した本島常務も「いずれも新鮮な体験。これからも一般の人たちと接点を持つことのできる、こうしたイベントを大切にしていきたい」と話していた。
最後に、サッカー日本代表のレプリカユニフォームが当たるじゃんけん大会が行われ、参加者全員とアスリートが一緒に記念撮影。講師を務めた田中選手と熊谷選手はロス2028パラリンピックを目指すことを伝えると会場からは激励の拍手が起きた。イベントの行われた静岡は体を動かすのに快適な気温で、まさに「晴れスポ」日和となった。今回のイベントが、思い思いに汗を流すことで参加者同士の気持ちが通じ合い、スポーツの魅力を体感できる格好のきっかけとなったようだ。