2019年05月07日
東京オリンピック・パラリンピックを盛り上げる「福島から新時代へのキックオフ~東京2020開催まであと500日!~」(主催・読売新聞社、後援・福島県、特別協力・セコム、三菱電機、協力・横浜市、福島民友新聞社、(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)が4月20日、サッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)で行われた。
「Jヴィレッジ」は東京電力福島第一原発事故で廃炉・復旧作業の前線基地となっていたが、この日、約8年ぶりにスポーツ拠点としての営業を全面再開。徒歩圏内にJR常磐線の新駅「Jヴィレッジ駅」も開業した。
オープニングでは、山口寿一・読売新聞グループ本社社長が「Jヴィレッジは、大震災と原発事故に見舞われましたが、福島復興のシンボルとして、再出発することになりました。来年3月26日には、東京オリンピックの聖火リレーが、ここからスタートします。まさに『キックオフ』の地となります。さらに福島は、野球とソフトボールの会場になります。それでは皆さん、キックオフイベントをどうか存分にお楽しみください」とあいさつした。
続いて、ソフトボール女子日本代表の宇津木麗華監督と、アテネ五輪野球日本代表を率いた中畑清さんによるトークショーが行われた。
宇津木監督は「東京五輪は一生に一度しかないので、結果を求めてやっている。メダルを取りたい」と決意を述べると、中畑さんは自らの経験を基に、「(日の丸を背負って戦うことは)苦しいけれど、選ばれし人間しかできないこと」とエールを送った。
両種目が五輪に復帰したことについて、宇津木監督は「素直な気持ち、本当にうれしい。12年間空いたが、日の丸を背負う意味を教えていきたい」と話す。司会者から野球はこれまで金メダルがないことを振られると、中畑さんは「なかった(中畑)清。(アテネ五輪は)銅で終わり、どーもすいません」とおどけたが、「稲葉監督はフレッシュでチームも若く、良かったかな」と、今回のチームに悲願の金メダル獲得への期待を寄せた。
ソフトボールは2020年7月22日に福島で開幕する。この日は、エースとして日本を北京五輪金メダルに導いた上野由岐子投手の38度目の誕生日。宇津木監督は「上野はまさにオリンピックの申し子」と、その巡り合わせや百戦錬磨のベテランとしての存在感に信頼を置く。また、4年に1度しかない五輪では情報戦が大切だといい、上野投手は2年間シュートを実戦では投げずに決勝まで封印したことなど、興味深い裏話も披露された。
最後に中畑さんは、野球とソフトボールが福島で行われることで「(被災からの)復活のメッセージを送るチャンス。一致団結して世界に送り出したい」と話した。宇津木監督は「何度も福島で合宿などを行い、自分たちは福島の一員として戦っている。一番いいメダルをとって、こちらに戻ってきます。頑張ります」と言葉に力を込めた。
次に、野地誠・福島県文化スポーツ局長と石内亮・横浜市市民局長を招いたパネルディスカッション「我が街にオリンピックがやってくる」が行われた。石内局長は横浜が2002年のサッカーのワールドカップ(W杯)、今年のラグビーW杯、さらに20年の東京五輪では野球の決勝が行われることを紹介。世界3大スポーツイベントで決勝が行われる唯一の都市になることをアピールした。野地局長は福島について「大変きれいな自然に恵まれ、歴史・伝統もあり、モモやリンゴ、ラーメン、日本酒などおいしいものがある。震災後に温かいご支援をいただき、感謝の思いを込めて福島でお待ちしたい」と呼びかけた。パネルディスカッションにも参加した中畑さんは「福島でいいスタートができるかに五輪の成功がかかっている。ここからパワーを発信していきたい」と話した。
そのほか、各種の体験イベントが行われ、親子連れなどが楽しんだ。
まず、抜けるような青空の下、緑のピッチ上では、ジャイアンツアカデミーによる「はじめての野球体験」が開かれ、巨人の抑えとして活躍した西村健太朗コーチらが、園児や小学校低学年の子供たちに野球の楽しさを教えた。野球経験のない子供たちにゴロの捕り方やボールの投げ方などの基本動作を指導。その後は、ホームベース上にティーを置いて打って走る試合形式を体験。止まっているボールでもなかなか前に飛ばすことができなかった場面もあったが、いいバッティングには大きな歓声が響いた。コーチからは「相手が捕れるように、思いやりを持って相手にボールを投げられるようになったのが良かった」などの言葉が贈られた。最後は、荒井幸雄コーチが1984年ロサンゼルス五輪野球(公開競技)の金メダルを、参加者に触れさせたり、首にかけたりして子供たちと交流した。
アリーナでは、三菱電機提供の「車いすバスケットボール体験」が開かれた。2004年アテネ大会まで5大会連続でパラリンピックに出場した上村知佳さんが、3人を相手にデモンストレーションを行った。巧みなホイールさばきと体の動きで、サッカーのマラドーナやメッシのように、守りを次々と抜いてゴールを決めると、参加者からは大きな拍手が上がった。子供たちも車いすに乗って体験したが、下半身が安定しないうえ、膝を使えず、ボールを遠くへ投げることの難しさを実感していた。
隣ではセコム提供の「ボッチャ体験」が行われ、簡単そうに見えながら奥の深い競技に子供たちは夢中になっていた。
雨天練習場では、パナソニックワイルドナイツの選手によるラグビー教室が開かれ、ボールを持って走る練習などが行われた。
また、12年ロンドン五輪マラソン男子代表の藤原新さんによる「ランニング教室」では、藤原さんが先頭に立って子供たちと一緒に走った。腕の振り方については「肩を揺すってはだめ。大きく振るより、長距離はシュッシュ、シュッシュと、肘から下をコンパクトに小さく振ろう」などとアドバイスした。
日本財団パラリンピックサポートセンターの協力で、2016年リオデジャネイロ大会と18年平昌(ピョンチャン)大会のパラリンピックの聖火リレーで使われたトーチと記念撮影するスポットも。また、パラリンピック出場選手に向けた寄せ書きには多くの人が思いを記した。9枚のパネルを投球で打ち抜くゲームでは、親子連れなどが楽しんでいた。