2022年10月04日
主 催/MS&ADインシュアランスグループ
共 催/読売新聞社
後 援/公益財団法人 日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会、一般社団法人 大学スポーツ協会、東京都
協 力/東洋大学、東京ボッチャ協会、公益財団法人 鉄道弘済会、NPO法人 幼児教育従事者研究開発機構
ランニングやパラスポーツを通じてアスリートと交流するイベント「MS&AD Well-being Sports Project 晴れスポ」が2022年9月から12月にかけて、全国3か所で開かれる。記念すべき第1回は、「東京2020オリンピック・パラリンピック」開催1周年を記念する事業として9月17日、東京都文京区の東洋大学 白山キャンパスで行われた。会場には、首都圏を中心に約100人の親子らが参加して、アスリートらと心地よい汗を流した。
このプロジェクトは、日本パラリンピック委員会のオフィシャルスポンサーであるMS&ADインシュアランスグループがスポーツを通じた「共生社会の実現」を目指して企画。「スポーツを体験して、心も身体も晴れ晴れしよう」をテーマに、アスリートらの指導によるランニング教室やパラスポーツ体験を通して参加者に体を動かしてもらう。また、イベントで講師を務めるアスリートによるトークショーが行われるのも目玉になっている。
プロジェクトの1回目となる、この日登場したアスリートは、箱根駅伝で「山の神」と呼ばれた同大OB柏原竜二さん(33)、22年8月にオランダで開かれたボッチャの国際大会でベスト8に入るなど、国内外の大会で活躍する佐藤駿選手(26)、東京パラリンピックに出場してやり投げ(F46)で6位入賞を果たした白砂匠庸(しらまさ・たくや)選手(26)、そして同大会の男子マラソン視覚障害(T11、12クラス)で7位に入賞した熊谷豊選手(35)。白砂選手はあいおいニッセイ同和損保、熊谷選手は三井ダイレクト損保に所属し、いずれもMS&ADインシュアランスグループの選手として活動している。
イベントに先立ち、MS&ADインシュアランスグループの原典之代表取締役社長が「健康や長寿に、我々企業として何か貢献できないかと企画したのが今回のプロジェクト。昨年の東京2020パラリンピックで多くの方が感じたスポーツの魅力や共生社会の大切さをさらに多くの方に感じてもらいたい」と挨拶。
続いて、自らもランニングをはじめ様々なスポーツを楽しんでいるというフリーアナウンサーの長谷川朋加さんの司会で、参加アスリートによるトークショーが始まった。
柏原さんは17年3月31日に現役を引退後、富士通の企業スポーツ推進室に所属し、様々なスポーツ活動支援や社会貢献などに取り組んでいる。「その意味でも、今回のイベントに参加できることは自分にとって有意義なこと」と話す。実際、一般の人がパラスポーツを体験する機会は少なく、「このイベントを、その魅力を知ってもらうための貴重な機会にしたい。みんなで楽しみながら体を動かしましょう」と話しかけると、参加者から大きな拍手が沸き起こった。
「本格的にやり投げの競技を始めたのは16年から。東京2020パラリンピックの開催が決まってからです」と話すのは白砂選手。2歳の時に事故で左手の関節から先を失った。やり投げを始めるまでは走り幅跳びや砲丸投げを行っていたという。実際の競技では、長さ約2メートル70センチ、重さ約800グラムのやりを投げるが、今回はターボジャブ(長さ70センチ、重さ約300グラム)という室内でも練習できる小型のやりの投てきを実演。ジャベリックスローという競技にもなっていて、なめらかな弧を描いて飛んでいくターボジャブに子どもたちからは「スゴーイ!」と歓声が上がった。
脳性まひを患う佐藤選手は「障害や年齢などに関係なく、だれでも取り組めるのがボッチャの魅力」と話す。目標となる白い球に自分の球を投げたり転がしたりして、いかに近づけるかを競う競技。日本選手権では3位に入ったこともあり、日本代表候補選手でもあるが、練習の合間を縫って競技の普及にも積極的に取り組んでいる。「ルールもシンプルで間口は広いのですが、相手との駆け引きなど、チェスやカーリングにも似た競技の奥深さに夢中になりました。プレーのスタイルも人によってさまざま。その楽しさを今回のようなイベントを通して一人でも多くの人に伝えられたらと思っています」
生まれつき視覚に障害を抱える熊谷選手は中学2年生の時から陸上を始めた。「お前、速そうだから、陸上やらない?」と友人に誘われて、競技を始めたのですが、誘った友人がすぐに転校してしまい、「結局、自分一人で黙々と競技に取り組む羽目になってしまいました」と話すと、会場からはドッと笑いが。19年の福岡国際マラソンで視覚に障害のあるT12クラスで日本歴代3位となる2時間25分11秒の自己ベストを記録。「本当はつらいことが嫌いなので練習は苦手なのですが、良い記録を残せた時のスカッとした気持ちが忘れられずに競技を続けています」。その熊谷選手が話すと、柏原さんも「そうそう」と言って頷(うなず)いていた。
こうした各アスリートの競技にかける思いに加え、パラスポーツの可能性や生涯に渡って取り組むことのできるスポーツの魅力などについて話は盛り上がり、用意された時間はあっという間に過ぎた。トークショーに続いて、いよいよスポーツ体験。柏原さんと熊谷選手によるランニング教室、佐藤選手が講師を務め、白砂選手も参加して行われたボッチャ、そして休憩時間には白砂選手指導によるターボジャブを投げる体験会も行われた。さらに、鉄道弘済会のスタッフの指導を受けながら、生活用と競技用の義足をつけて歩く体験会も行われ、子供から大人まで人気を集めた。参加アスリートに加え、体験会のサポートを東洋大の学生有志が行い、参加者はスムーズに各競技を体験することができた。
ランニング教室は、長距離を速く走るために使う筋力を鍛える本格的な内容。近年のランニングブームもあって参加者は真剣な表情でプログラムに取り組んだ。体をねじりながら片足を交互に上げる運動では、動きをいち早くマスターした子供が一緒に参加した親を「指導」する場面も。
ボッチャはルールの簡単な説明を受けて、参加者がチームに分かれて試合形式で体験。参加者が球を投げるごとに歓声とため息の交じった声が会場内に響き渡り、「機会があれば、またやってみたい」と夢中になる参加者も多かった。ターボジャブの投てきもコツを覚えて遠くに投げられるようになると、「またやりたい」と再挑戦する子供もいた。
片脚を折り曲げて膝部分に装着する生活義足の体験では重心の移動が難しく、両脇をスタッフに支えられて、何とか歩ける人も。一人で参加した会社員の男性(52)は「勤め先に障害を抱えている部下がいるので、その人の境遇を少しでも理解できればとイベントに参加したが、資料を読んで理解するのと違い、体を動かして、文字通り『体感』することができた」と話す。埼玉県から親子4人で参加した小学2年生の女の子(8)は、「どの体験も初めてで面白かった。お話だけでなく、体を動かすイベントなのであっという間に時間が過ぎた気がする」と話していた。
Tシャツに着替えてすべてのコーナーに参加した原社長も額の汗をタオルで拭いながら、「アスリートの皆さんとの距離も近く感じられ、個人的にイベントを楽しむことができた。これからもこのプロジェクトを続け、多様な共生文化を体を動かして考えるきっかけにしていきたい」と話していた。
イベントが行われた9月17日はシルバーウイーク初日の土曜日。設備の整った東洋大の体育施設で、思い思いに競技を楽しみ、さわやかな汗を流した参加者たちは満足した様子。「似たようなイベントがあれば、また参加してみたい」という人も多く、体育の秋にふさわしい充実したイベントになったようだ。