2022年12月21日
主 催/MS&ADインシュアランスグループ
共 催/読売新聞社
後 援/公益財団法人日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会、 一般社団法人 大学スポーツ協会、東広島市教育委員会、公益社団法人広島県パラスポーツ協会
協 力/広島県、広島大学、一般社団法人広島県ボッチャ協会、クライムセンターCERO、広島大学霞ASC、広島国際大学ASC、NPO法人 幼児教育従事者研究開発機構
2022年秋から始まったスポーツイベント「MS&AD Well-being Sports Project 晴れスポ」。スポーツを通じて、心も身体も晴れやかに。健康で幸せな社会づくりを目指し、Well-beingの向上につなげていくプロジェクトとして、東京と札幌での開催に続き、今年最後となる第3弾が12月10日、広島県東広島市の広島大学東広島キャンパス西体育館で行われた。近隣の住民を中心に親子ら計約120人が参加して、アスリートらと体を動かす楽しさを分かち合った。
このプロジェクトは、日本パラリンピック委員会のオフィシャルスポンサーであるMS&ADインシュアランスグループがスポーツを通じた「健康で幸せな社会づくり」「共生社会の実現」を目指して企画。「スポーツを体験して、心も身体も晴れ晴れしよう」をテーマに、アスリートらの指導によるランニング教室やパラスポーツ体験を通して参加者に体を動かしてもらう。また、イベントで講師を務めるアスリートが自らの競技体験などを話すトークショーもイベントの目玉になっている。
プロジェクト第3弾となる今回は、1992年のバルセロナオリンピック女子マラソンで銀メダル、96年のアトランタオリンピック女子マラソンで銅メダルを獲得した有森裕子さん(56)がゲストで出演。さらにアテネと北京オリンピックで女子マラソンに出場した土佐礼子さん(46)、北広島市出身で、東京2020パラリンピックに出場してやり投げ(F46)で6位入賞を果たした白砂匠庸(しらまさ・たくや)選手(26)、そして重度の視覚障害を抱え、2022年のパラクライミング・ワールドカップで2大会連続金メダルに輝いた會田祥(あいた・しょう)選手(26)が参加した。土佐さんは、三井住友海上・女子陸上部のアドバイザーを務め、白砂選手はあいおいニッセイ同和損保、會田選手は三井住友海上あいおい生命に所属しており、いずれもMS&ADインシュアランスグループの一員として活動している。
イベントに先立ち、MS&ADインシュアランスグループの田村悟専務執行役員が「保険を扱う企業としてみなさまの生活を支援する取り組みを行っており、今回のイベントもスポーツを通して健やかな日々を送るきっかけにしていただきたいと企画しました。今回で3回目となりますが、西日本では初めての開催になります。どうぞ、体を動かすことを存分に楽しんでください」と挨拶。続いて、フリーアナウンサーの珠居亜弥さんの司会で、参加アスリートによるトークショーが始まった。
アスリートとして活動してきた中でのエピソードを尋ねられた有森さんは、初めての海外大会への参加でもあったバルセロナオリンピックで、競技直前に使っているコンタクトレンズの片方を洗面所で流してしまい、もう片方だけを装着してレースに臨んだエピソードを披露。「両方着けて走っていたら金メダルだったかも」と話すと会場がどっと沸いて、拍手が起きた。
それを受ける形で土佐さんが「大会前に転んだことがあって、ショックを受けたのですが、有森さんも転んだことがあると聞いて、妙に安心した記憶があります。それから、アテネオリンピックでは5位だったのですが、走り終わってスタンドへ挨拶に向かうと、みなさん大喜び。どうやら、金メダルを取った野口みずきさんと勘違いされていたみたいで……」と話すとまた会場は笑いに包まれ、和やかな雰囲気でトークショーは進行した。
「やり投げを始めるまで、走り幅跳びや砲丸投げを行っていました」と話すのは白砂選手。「本格的にやり投げの競技を始めたのは16年。東京パラリンピックの開催が決まってからです」。競技の魅力をアピールしようと、義手をガンダムやエヴァンゲリオンなどのアニメに出てくるようなかっこいいデザインにしてもらったことを紹介。ターボジャブ(長さ70センチ、重さ約300グラム)という室内でも練習できる小型のやりの投てきを実演し、美しい弧を描いて飛んでいく様子に子どもたちから「ワーッ」と大歓声が上がった。
會田選手は10歳の時に視覚障害者向けのクライミングスクールに参加してから、競技を続けている。「経験したことのない世界だったので、最初は怖くて、つらいことばかりでしたが、実際に目標を両手で握った時の達成感や、作戦を練っていく時の過程がだんだん面白くなってきました」と會田選手は振り返る。競技はハングオーバーした高さ15メートルほどの壁を目標目指して登っていく。「サイトガイド」と登るコースを決め、ガイドの指示を受けながら目標を目指す。會田さんも会場に用意された壁をガイドの指示を受けながら、素早く登ってみせ、そのスムーズな動きに会場からは盛んな拍手が起きた。
こうした参加アスリートたちの競技にかける思いに加え、パラスポーツの可能性や生涯に渡って取り組むことのできるスポーツの魅力などについて話は大いに盛り上がった。トークショーに続いて、いよいよスポーツ体験。有森さんと土佐さんによるランニング教室に加え、パラクライミングやボッチャの体験、そしてターボジャブの投てきも行われた。体験会のサポートを広島大学霞ASC(アダプテッドスポーツクラブ)、広島国際大学ASCや広島県ボッチャ協会、そして広島でクライミングやボルダリングのスペースを運営しているクライムセンターCEROのメンバーが行い、参加者はスムーズに各競技を楽しんだ。
ランニング教室は、入念な準備運動を経て、土佐さんが指導し、有森さんが主にサポート役を担った。小さな子どもに駆け寄って動作のコツを伝えたり、息の上がった大人を鼓舞したり、講師の2人も大忙し。走る時には体幹の強さが大切なことを土佐さんが強調し、そのための練習方法を、身振りを交えて伝えた。後半ではチームに分かれ、レース形式の練習もあり、練習を楽しみながらこなしていく子どもたちに対し、久しぶりに身体を動かしたという親が息を切らして床にへたり込む場面も。
ボッチャは目標となる白い球に自分の球を投げたり転がしたりして、いかに近づけるかを競う競技。広島県ボッチャ協会のスタッフからルールの簡単な説明を受け、参加者がチームに分かれて試合形式で体験した。一投ごとに参加者の歓声とため息の交じった声が会場に響き、「またやってみたい」と夢中となる参加者も多かった。
子どもたちに人気だったのが、クライミングの体験。スタッフに励まされながら、ホールドを手と足で保持しながら、目標を目指して登っていく。多くの子どもたちが初挑戦で、足をどこにかけるか迷ったり、ホールドをつかむ力が尽きたりして、新しいスポーツに興味津々の様子で、何度も挑戦する子どももいた。
ターボジャブの投てきは白砂選手が直接指導。美しい弧を描くように投げるための手首の返し方などについて具体的な説明を受けて実際に投げると、思わぬ方向に飛んで行ってしまったり、コツを覚えて遠くまで飛ばせるようになったり、競技の面白さを感じているようだった。
参加者はこれらの競技を順番に体験。車いすに乗った小学2年生の長男(8)と一緒に参加した母親(42)は「初めて体験するスポーツが多かったので面白かったし、アスリートのみなさんと身近に接することができたこともよかった」と話し、ランニング教室に参加した長男も「車いすだけど速さには自信があったので、楽しめました」と話していた。講師を務めたアスリートたちも、自分が取り組んでいる競技以外を体験する機会はほとんどないとのことで、刺激を受けた様子。「これからもこうしたイベントを通して、パラスポーツへの理解やファンも拡げていきたい」と口々に話していた。
各競技を体験し、参加者らと一緒に汗を流したMS&ADインシュアランスグループの福田真人取締役が「今後もこのイベントを通じて、様々なスポーツや体験をしてもらい、スポーツの楽しさやパラスポーツへの理解を深めることで、多様性を認め合う社会を築いていくきっかけにしていきたい」とイベントを締めくくる挨拶。
最後に、参加者とアスリートが一緒に記念撮影を行った。イベントの行われた広島は好天に恵まれ、広大なキャンパスで、参加者たちは思い思いに汗を流した。親子で一緒に体を動かす機会は意外にも少ないようで、「こうした機会があれば、また参加したい」と話す人も目立った。今回のイベントは身体を動かすことに加え、家族や親子のコミュニケーションを図るきっかけにもなったようだ。