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スポーツ庁委託事業「平成 30 年度パラリンピック教育普及啓発事業」

パラスポーツ・アスリートをもっと知ろう! in 浜松

2019年01月21日

#パラスポーツ

2020年東京パラリンピックに向け、一流の選手とともにパラスポーツの魅力にふれる「パラスポーツ・アスリートをもっと知ろう! in 浜松」が1月14日、浜松市の浜松アリーナで開かれた。親子連れら約60人の参加者たちは、競技に夢中になって楽しんだ。

主催=読売新聞社
後援=公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会
協力=公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、NPO法人幼児教育従事者研究開発機構

パラ卓球で対戦する土井選手(左)と松田さん

会場に登場したのは、ボッチャの杉村英孝選手とパラ卓球の土井健太郎選手、そして、元競泳日本代表の松田丈志さんの3人。杉村選手は12年ロンドン、16年リオとパラリンピックに2大会連続で出場。リオでは銀メダルを獲得した東京での有力な金メダル候補だ。土井選手は18年にインドネシアで開かれたアジアパラ競技大会日本代表で、東京でパラリンピック初出場を狙う期待のホープ。2人とも地元の静岡県出身とあり、知名度は高い。

杉村英孝選手

土井健太郎選手

松田丈志さん

松田さんは04年のアテネからリオ大会までオリンピックに4大会連続出場し、計四つのメダルを獲得した日本水泳界の「顔」。16年の現役引退後は、スポーツ団体のアスリート委員を務める一方、スポーツジャーナリストとしても活動している。

小野澤玲奈アナウンサー

3人は、静岡第一テレビの小野澤玲奈アナウンサーの司会でトークショーに臨んだ。

先天性の脳性まひのため車いすで生活する杉村選手は、高3の時に入所していた施設の先生に見せてもらったビデオでボッチャを知ったのだという。約1年後に県内で開かれた大会に、練習をほとんどしないで初めて参加したところ、見事に3位に入賞。「うれしかった反面、悔しくもあり、今日まで競技を続けている原動力になっています」と語った。

他界した「弟の思いを継ぐ」・・・パラ卓球・土井選手

土井選手は先天性の骨形成不全症で、車いすで暮らしている。小6のときに、地元のクラブで卓球を始めたが、「野球が好きだったので、初めの頃は、ピンポン球を野球のボールに、ラケットをバットに見立てて遊んでいました」と笑った。同じ病気で一緒に競技を始めた双子の弟の康太郎さんが15年に他界。「2人で金メダルを争うのが夢でしたが、弟の思いを継ぐのは自分しかいない」と考え、より厳しい練習に打ち込んでいる。

3人のアスリートはパラリンピック、オリンピックへの熱い想いを語った

「水泳頑張れば、TVに出られる」・・・競泳・松田選手

松田さんが水泳を始めたのは、4歳のとき。9歳年上の姉の影響という。オリンピックを目指すきっかけとなったのは、1992年のバルセロナオリンピックで当時14歳の岩崎恭子さんが200メートル平泳ぎで金メダルを獲得したことだ。「水泳を頑張れば、毎日テレビに出られる」。小2だった松田さんは思ったそうだ。

「簡単ですが、とても奥深い」・・・ボッチャ・杉村選手

杉村選手はリオパラリンピックの銀メダルを見せてくれた

杉村選手は、なじみが薄い人がまだまだ多いボッチャのルールを簡単に説明した。的となる白い球に向け、青い球と赤い球を6球ずつ投げ、最後の時点で、白い球の近くにある方が勝ちというのが基本になる。白い球に近づけて投げるだけでなく、白い球の近くにある相手の球をはじき飛ばしたり、球と球をぶつけることで白い球に近づけたりと、作戦は多彩。杉村選手は「ボッチャは簡単ですが、とても奥深いのが魅力です」と語った。

パラ卓球は、通常の卓球とほぼ同じルールで行われる。土井選手は身長1メートル34センチと小柄だが、「球を打つコースや回転などで、体格の差を埋められるのが、卓球の面白いところです」と話した。

パラリンピックの思い出として、杉村選手はリオ大会の開会式で、満員のスタジアムの中、日の丸を掲げて入場行進したことを挙げた。「なかなかできない体験で、気持ちが高ぶりました」と振り返った。松田さんは「オリンピックは世界中の選手が本気で向かってくるので、目の色が違います」と話した。土井選手は「話を聞くだけで楽しみです。ライバルに勝って、ぜひパラリンピックに出たいです」と決意を新たにしていた。

アスリートへ質問する参加者

手話通訳も行われた

トークショーの後、参加者たちがお待ちかねのボッチャとパラ卓球の体験会が始まった。

ボッチャのコーナーでは、参加者たちはまず球を実際に投げてみた。球は革製だが、中は柔らかく、運動会の玉入れで使うボールに近い感触だ。思いっきり転がすと意外に遠くまで行くが、ふんわりと投げるとボタッと止まる。投げる方向だけでなく、力加減が難しい。

杉村選手がお手本を示した

「座った状態から速いスマッシュ」にびっくり・・・パラ卓球の参加者

パラ卓球のコーナーでは、参加者一人ひとりが、土井選手と球を打ち合った。希望者のために、実際に車いすに乗った状態から打つこともできるように、車いすも用意された。

パラ卓球体験

卓球に慣れていない参加者には、ゆっくりとした球を打っていた土井選手だが、学校の卓球部に所属しているという中1の山口実祐君との打ち合いでは、鋭い球が行き交うラリーになった。山口君は車いすに座っても対戦したが、これには四苦八苦。山口君は「座った状態から速いスマッシュが来るのには驚きました。車いすでやると、球を上から打つ感じで、良い球が行きませんでした」と話した。

松田さんも杉村選手、土井選手と対決した。一流のアスリートだけあってのみ込みが早く、ボッチャでは杉村選手に迫る一幕もあったが、次々と白い球に杉村選手の球が吸い寄せられ、最後は完敗。車いすに乗って臨んだ土井選手とのパラ卓球対決では、鋭いショットで見せ場も作ったが、激しく回転するサーブを打ち込まれると、なかなか返せず苦戦。パラアスリートの実力に感心していた。

杉村選手と松田さんのボッチャ対決

土井選手と松田さんのパラ卓球対決

最後に、参加者たちに対し、杉村選手が「2020年の東京パラリンピックでは金メダルを目指します」と力を込めれば、土井選手は「皆さんからの応援が選手の力になっています」と感謝の気持ちを示した。松田さんは「皆さんもスポーツでも勉強でも何でも良いので、ちょっとずつでも進歩する喜びを感じてください」と話した。

アスリートから参加者にメッセージが送られた

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