2019年02月18日
2020年東京パラリンピックに向け、一流の選手と一緒に競技を楽しみながらパラスポーツの魅力を体感する「パラスポーツ・アスリートをもっと知ろう! in 横浜」が2月11日、横浜市の横浜市神奈川スポーツセンターで開かれた。読売新聞社の「元気、ニッポン!」プロジェクトの一環。親子連れら約170人が参加し、会場は熱気に包まれた。
主催=読売新聞社
後援=公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会、横浜市教育委員会
協力=公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、NPO法人幼児教育従事者研究開発機構、横浜市体育協会 横浜市神奈川スポーツセンター
ウィルチェアーラグビーとは、ウィルチェアー(車いす)に乗って戦うラグビーで、四肢まひ者など、比較的重い障害を抱える人が競技できるチームスポーツとして考案された。車いす同士のぶつかり合いが許された唯一のパラリンピック競技で、その激しさは観客を圧倒する。若山選手は昨年、オーストラリア・シドニーで行われた世界選手権に日本チームの一員として出場し、金メダルを獲得している。
畠山洋平選手は、パラバドミントンの低身長クラスで競技。ダイナミックで素早い動きが持ち味で、昨年、ブラジルで開かれた国際大会のシングルスでは準優勝した。19年2月現在の世界ランキングは9位だ。
畠山愛理さんは6歳から新体操を始め、日本代表「フェアリージャパン」の一員として12年のロンドンオリンピックで7位、16年のリオオリンピックで8位にそれぞれ入賞。現在はスポーツキャスターやモデルとして活躍している。
イベントは、日本テレビの寺島淳司アナウンサーの司会で、3人のアスリートによるトークショーから始まった。
「自分の場合、ドキュメンタリー映画を見たことが競技を始めるきっかけになりました」。若山選手はそう話を切り出した。その映画とは05年にアメリカで制作された「マーダーボール」。「殺人球技」という意味で、ウィルチェアーラグビーは当たりの激しさからかつてそう呼ばれていたことがある。内容は、障害を克服しながら、この競技で世界一を目指す男たちの姿を追ったもので、「日本での公開直後に見て、競技が楽しそうだし、かっこいいと感じ、自分もやってみたいと思いました」と若山さんは話す。
一方、畠山洋平選手は16年のリオパラリンピックの閉会式をテレビで見ていて、パラバドミントンで低身長の選手が紹介されているのを知り、「自分もやってみたい」と日本障がい者バドミントン連盟に連絡をとり、担当者と面談。そこから選手生活が始まった。畠山選手は以前、部活でバドミントンをしていたことがあり、ブランクはあるもののバドミントンは再挑戦となる。世界ランキング5位以内に入ることを目指し、今年世界各地で予定されている国際大会を転戦する予定だ。その先には20年の東京パラリンピックでの出場を見据えている。
畠山愛理さんは元々「外で遊ぶのが大好きな活発な子供」だった。当時、「新体操の競技で見た空中にひらめくリボンが本当にきれいで、私もやってみたいと思ったのが最初です」と話す。才能にも恵まれ、中学生でフェアリージャパン入りを果たし、ロンドンとリオオリンピックではいずれも入賞。現在は、アスリートとしての経験を生かし、スポーツキャスターとしてパラスポーツを含めたスポーツ全般の魅力を伝えている。
続いて行われたのが、パラスポーツの競技体験会。第一線の選手とともにパラスポーツを体験できる貴重な機会となった。ウィルチェアーラグビーの体験コーナーでは、「ラグ車」と呼ばれる実際の競技用車いすが用意され、参加者はそれに乗って操作を体験。さらに若山選手の乗る車いすと体当たりして、その衝撃の大きさを体感した。車体がぶつかるたびに参加者からは大きな歓声が上がり、競技の激しさに驚いた様子。親子で参加した小学4年生の筒井瑠夏さんも「見ているより体験することで競技の迫力を実感できました」と話していた。
パラバドミントンの体験コーナーでは、コートで畠山選手と実際にシャトルの打ち合いを楽しんだ。ラリーが続くと、寺島アナウンサーによる実況中継も会場に響き、周囲から声援が増え、大いに盛り上がった。子供たちに交じって、昔、バドミントンをやっていて「腕に覚えがある」という親も参加し、畠山選手とシャトルを思い切り打ち合いながらバドミントン独特のリズムを楽しんでいた。学校のクラブ活動でバドミントンをしたことがあるという小学6年生の柳田乙葉さんも「一流選手との打ち合いは初めてで、とても貴重な体験になりました。何かスポーツをしてみたいと思いました」と興奮した様子で話していた。
もう一つがボッチャの体験コーナーだ。的となる白い球に向け、決まった数の青い球と赤い球をそれぞれ投げ、最後に白い球の近くにある方が勝ちという内容。球のコントロールだけではなく、相手との駆け引きも大切になり、カーリングに似た知的な要素もある。子供たちもスタッフの指導を受けながら次々と球を投げ入れ、ゲームの奥深さを感じているようだった。この競技を初めて体験した小学4年生の洌鎌(すがま)渉君は「ルールは簡単でしたが、どこに球を投げ込めばいいのか迷いました。機会があればまたやってみたい」と話していた。
今回のイベントでパラスポーツを初めて体験した参加者が多く、体験会が終わっても、参加者が感想を家族や友人らと語り合う光景があちこちで見られた。最後に各アスリートが2020年に向けて抱負を語った。若山選手は「地元開催なので金メダルを目指したい。そのために代表メンバーに選ばれるよう様々な努力を重ねていくので応援をお願いします」と力強く話した。畠山洋平選手は、「まずパラバドミントンという競技を一般の人に知ってもらうことが第一。2020年は、自分も大会に参加してメダルを取って銀座をパレードしたい」と話し、会場からは大きな拍手が起こった。畠山愛理さんも、「このイベントはパラスポーツを知る貴重な機会。実際に体験することで競技を身近に感じ、ファンになってもらい、2020年を一緒に盛り上げていきましょう」と話し、今回のイベントを締めくくった。